クリストファー・レンシング博士 Christopher Rensing

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20代の終わりごろから少しずつ歩行に支障が出始め、ポスドクの時期に悪化した。現在ではモビリティ・スクーターを使用している。現時点で障害の原因は不明で、治療法もない。すでに研究室を持つ立場になっているので、実験作業そのものは学生やポスドクに任せ、自分は現場でその指導に当たっている。
クリストファー・レンシング博士 福建農林大学 特別教授
専門領域:環境微生物学
学位:1996年に博士号取得(ベルリン自由大学)
インタビュー時年齢:58歳(2022年1月)
障害の内容:1998年に診断された変性性ニューロパチー(末梢神経障害)による下肢運動障害で、2009年よりモビリティ・スクーターを使用。
その他の情報:1999年よりアメリカに渡り、アリゾナ大学やRTIインターナショナルの研究所を経て、2012年にコペンハーゲン大学の教授となり、2013年から中国科学院城市環境研究所の客員教授となり、2016年より現職、環境微生物学研究所所長を兼任。
困ってきたこと
モビリティ・スクーターを使用しているので、学会参加などの移動に困ることがある。特に、飛行機にはバッテリーの持ち込みを拒否されることがある。 病気は身体的機能を障害するだけでなく、受容過程において精神的にもよくない影響を与える。
対応・工夫(周囲の対応含む)
大学キャンパス内の住居は、バリアフリー化のための改修工事をしてもらった。建物の入り口にはスロープを設置し、居室は1階にある。部屋は2部屋をつなげた形で十分広く、浴室にもスクーターで入れる。研究室も1階にある。運転手を呼ぶと、スクーターをたたんで車に乗せ、行きたいところに連れていってくれる。中国では欧米と比べて、研究室の人間関係における公私の区別があいまいなため、学生が中国語で病院の予約をしてくれるなど、助けられている面もある。
スクーター用バッテリーの予備を世界各地に準備しておき、誰かに空港まで持ってきてもらう。 専門家の心理療法は少なくとも試してみる価値があると考える。障害に関する否定的な感情を正直に表に出す場を持つことは大事である。
やりがい
障害は確かに人生に影響を与えるが、起こりうる様々な困難のうちのひとつであって、夢の実現を不可能にするものではない。私(レンシング博士)が特別教授として仕事をしていると知ることで、他の人たちにも「自分もできるのではないか」と思ってもらいたい。